3月の投句箱

雛人形の写真

「雛」

「雛」という季題は「雛祭」をはじめ沢山の傍題があります。
まずは歳時記を繙(ひもと)こう。さて、あなたはどんな雛の景を詠む?

今月の選者

池田雅かず(いけだ まさかず)
アロハシャツを着た男性の写真
卯浪俳句教室「卯浪OSAKA」講師
https://unami-osaka.jimdosite.com/
日本伝統俳句協会関西支部企画委員
公益財団法人虚子記念文学館常務理事
精神対話士

“ふれあって・こころ・ゆたかに“
たった十七音の言の葉を媒介にして、自然とふれあい、人とふれあい
「今・ここに・生きていること」
その実感と歓びを共感の心でシェアすること。
それが私にとっての俳句です。

特選1

父そつと覗いてゆきぬ雛の間紫雲英

選評

雛の間は男子禁制ではないがなんか面映ゆいもの。
「目立たぬように はしゃがぬように……」かつて河島英五は「時代おくれ」でこう唄った。きっとそんな父かもしれない。高倉の健さんみたいに全然かっこ良くはないけれど、娘の成長を思う気持ちは誰よりも……。
「イクメンの時代」今の父親像からは遠いが、こんな“昔もん”の父もどこか愛らしい。

特選2

全員で探す雛の小笛かな砂山恵子

選評

さながらスラップスティック・コメディーのような俳諧味。この雛人形をとても大切にしている家族たちのドタバタだ。
代々受け継がれ、そして次世代へ残す雛たち。それ故、たった一つの小道具でさえも欠けさせてはならぬ。それでは先代に申し訳が立たぬ。
「あった!」という声がもうすぐ聞こえてきそう。

特選3

御目に星またたいており雛人形勝本熊童子

選評

こちらは一転何ともファンタジック。作者はその心象風景の中に、雛の目に瞬く星影を確と見たのである。
星は悠久、永遠のシンボルだ。現在・過去・未来…これからもずっと星のように、我が家の息災と娘たちの仕合せを見つめ続けて欲しい。
図らずもそんな願いが星となって、雛の瞳に、否、作者の瞳に現れたのである。吉祥の星影。

佳作

アルバムをひらく母の目雛の間暖井むゆき
厄を乗せ穢れなき雛流れゆく藤田康子
巻紙を外し女雛のまばたきぬ秋野しら露
雛かざり終へ留学の娘へ電話桜鯛みわ
幾十年光る黒髪雛飾り中島走吟
雛の日の水郷めぐる稚児の舟dragon
古雛の袂にこもる土蔵の香靜代
真夜来れば宴となるやも段の雛赤福餅
挨拶の声の揃ひて雛の客満月
老いてなほ華やぐ心雛めぐり水城みずき
招かれて男児もじもじ雛まつり大谷如水
暫くは雛の間として仏の間ようじ
古雛幼き吾に出合ひけりぶえもん
蔵の中の眠りふたたび雛納沙那夏
ばあちゃんが少女のころのひひなかなひでやん

気になる句

並べるも蔵(しま)ふも淋し雛祭
心惹かれる句です。並べる淋しさ…そこにしんみりとする「余情」を感じます。
ただ、「蔵ふ」にルビを振ったのが惜しい。
今回全投句中、ルビを振った句が4句ありました。基本、ルビは振らないようにしましょう。
参考までに「稲畑汀子 俳句集成」全5398句。どのページを開いても私には読めない漢字はありません。

選者吟

灯してよりの耀き古ひひな雅かず

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