1月の投句箱

水仙の花

「水仙」

昔、本井英先生のお宅にお邪魔して新年句会を行ったときに「だらしなく絡まるホース水仙花」という俳句を詠みました。
今にして思えば、もうちょっとマシな景が目に入ってきても良さそうなものです。
失礼な弟子で申し訳ありません。

今回の選者

前北かおる(まえきた かおる)
選者:前北かおる
日本伝統俳句協会関東支部千葉部会長。
「夏潮」会員。句集『ラフマニノフ』、『虹の島』。

ブログ「俳諧師 前北かおる」 
YouTubeチャンネル「前北かおる」 

特選1

水仙や文の封切る細き指立野音思

選評

この水仙は、室内に切り花を生けてあるのでしょう。丁寧に描写された女性の所作が優美です。クローズアップされた「指」の美しさに惹かれます。

特選2

墨の香に似て水仙の咲き満ちる柚木みゆき

選評

「墨の香に似て」とは、実に上品な比喩です。水仙というと、私は冷え冷えとした香りという感じで記憶しています。
「咲き満ちる」と落ち着いて結んだところにも、好感を持ちました。

特選3

水仙の群生崖に途切れけり珍酒

選評

伸びやかな景を思い浮かべたところに、「途切れけり」という断絶が来ていて効果的です。「水仙の群生」という漢語の硬さに、真冬の海岸の気象状況が思われます。

佳作

黒潮の膨るる岬野水仙しんい
水仙の背すじが伸びて雲はゆく大野美波
水仙や沖にながるる青き潮茫々
水仙や磔刑像の足に釘長谷機械児
部屋の風うごく水仙活けてより愛燦燦
水仙の一輪挿しに待たさるる深町明
燈台の灯の水仙に及ばざる杉原祐之
新任の牧師待つ島水仙花赤福餅
水仙の香りの先は祖母の家江の木はなお
黒塀をひよいと曲がれば水仙花釜眞手打ち蕎麦
流水のこゑくぐもつて水仙花正念亭若知古
水仙や校舎の裏の空しづか久森ぎんう
水仙や机に開く広辞苑紅花
水仙や月に一度の面会日キートスばんじょうし
払暁の厨にかをり水仙花工藤悠久

気になる句

カーテンのまだなき部屋に黃水仙
歳時記では水仙と黄水仙を区別していて、水仙は冬、黄水仙は春とされています。お題からは外れますが、明るさに惹かれました。
引っ越してきたばかりの、がらんとした部屋に日が差している景が思い浮かびます。新生活に期待がふくらみます。

選者吟

目の端にイルミネーション水仙花前北かおる

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