「水仙」
昔、本井英先生のお宅にお邪魔して新年句会を行ったときに「だらしなく絡まるホース水仙花」という俳句を詠みました。
今にして思えば、もうちょっとマシな景が目に入ってきても良さそうなものです。
失礼な弟子で申し訳ありません。
今回の選者
特選1
水仙や文の封切る細き指立野音思
選評
この水仙は、室内に切り花を生けてあるのでしょう。丁寧に描写された女性の所作が優美です。クローズアップされた「指」の美しさに惹かれます。
特選2
墨の香に似て水仙の咲き満ちる柚木みゆき
選評
「墨の香に似て」とは、実に上品な比喩です。水仙というと、私は冷え冷えとした香りという感じで記憶しています。
「咲き満ちる」と落ち着いて結んだところにも、好感を持ちました。
「咲き満ちる」と落ち着いて結んだところにも、好感を持ちました。
特選3
水仙の群生崖に途切れけり珍酒
選評
伸びやかな景を思い浮かべたところに、「途切れけり」という断絶が来ていて効果的です。「水仙の群生」という漢語の硬さに、真冬の海岸の気象状況が思われます。
佳作
黒潮の膨るる岬野水仙しんい
水仙の背すじが伸びて雲はゆく大野美波
水仙や沖にながるる青き潮茫々
水仙や磔刑像の足に釘長谷機械児
部屋の風うごく水仙活けてより愛燦燦
水仙の一輪挿しに待たさるる深町明
燈台の灯の水仙に及ばざる杉原祐之
新任の牧師待つ島水仙花赤福餅
水仙の香りの先は祖母の家江の木はなお
黒塀をひよいと曲がれば水仙花釜眞手打ち蕎麦
流水のこゑくぐもつて水仙花正念亭若知古
水仙や校舎の裏の空しづか久森ぎんう
水仙や机に開く広辞苑紅花
水仙や月に一度の面会日キートスばんじょうし
払暁の厨にかをり水仙花工藤悠久
水仙の背すじが伸びて雲はゆく大野美波
水仙や沖にながるる青き潮茫々
水仙や磔刑像の足に釘長谷機械児
部屋の風うごく水仙活けてより愛燦燦
水仙の一輪挿しに待たさるる深町明
燈台の灯の水仙に及ばざる杉原祐之
新任の牧師待つ島水仙花赤福餅
水仙の香りの先は祖母の家江の木はなお
黒塀をひよいと曲がれば水仙花釜眞手打ち蕎麦
流水のこゑくぐもつて水仙花正念亭若知古
水仙や校舎の裏の空しづか久森ぎんう
水仙や机に開く広辞苑紅花
水仙や月に一度の面会日キートスばんじょうし
払暁の厨にかをり水仙花工藤悠久
気になる句
カーテンのまだなき部屋に黃水仙
歳時記では水仙と黄水仙を区別していて、水仙は冬、黄水仙は春とされています。お題からは外れますが、明るさに惹かれました。
引っ越してきたばかりの、がらんとした部屋に日が差している景が思い浮かびます。新生活に期待がふくらみます。
引っ越してきたばかりの、がらんとした部屋に日が差している景が思い浮かびます。新生活に期待がふくらみます。
選者吟
目の端にイルミネーション水仙花前北かおる
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