11月の投句箱

枯れ木

「凩」
冬の初めに吹く強い北風。この風によって木々はたちまち葉を落とし、枯木となる。
三冬に亘って使われる「北風」との区別が必要。

今回の選者

長谷川槙子(はせがわ まきこ)
鎌倉一条恵観山荘の庭園で見つけた「猪の目」(いのめ)。ハート形に見えます。
1962年生まれ
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。

特選1

凩や高層ビルのぶっきらぼうダック

選評

高層ビルが「ぶつきらぼう」とは、大都会に吹く凩を言い得て妙。やはり木々を吹き枯らしてこその凩なのだ、と改めて思った。

特選2

木枯しや窓辺は人を恋うところ久森ぎんう

選評

美しい景色を眺めるのもよいけれど、窓辺は人を恋しく想うのが似合う場所。
戸外に、木の葉を散らす冷たい北風が吹いていれば尚のこと。

特選3

凩や星を南の空へ寄す清瀬朱磨

選評

オリオン、牡牛座、大犬座―冬の星座が南の空に寄っているのは、凩が吹き寄せたから―と、私もこの句の作者のような詩心をもって詠いたい。

佳作

凩の止むつかのまの葉のさゆれ河島 勇人
凩や天辺に葉のなき大樹青蛙
木枯や中途に入りし映画館長谷機械児
凩の夜道に一つ街路灯富雪
凩や亡き人の声後ろから薩摩っぽ
木枯や買い物帰りの妻に遇ふ茫々
凩や雑巾きゆつと絞りたる赤福餅
凩や沖のうねりの牙のごと愛燦燦
凩や日向を選んで歩くねことば雪華
上野へと凩止まぬ夜汽車かな坂口いちお
凩の磨きあげたる星の夜中島容子
凩や塾の灯りの煌々とdragon
凩や隠れ場所無きかくれんぼ七里
木枯や窓にお迎へ待つ園児みずな
凩や学び直しの辞書を買う宇波まり

気になる句

凩や残る一葉の強きかな
切字「や」「かな」の併用が惜しい。
「凩に残る一葉の強さかな」と「かな」に託して一気に詠む方が、凩に耐える只一枚の葉の健気さが際立つのでは。

選者吟

凩や一番星が揺れてゐる槙子

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