10月の投句箱

提灯のあかり

「秋祭」
秋季に行われる神社の祭礼。単に「祭」と言うと夏季のもの。別に「春祭」もある。
祭の発生や意義、季節感がそれぞれに異なる。農村の秋祭の場合、収穫に感謝し、山に帰る神を送るという本義が今も色濃い。

今回の選者

長谷川槙子(はせがわ まきこ)
鎌倉一条恵観山荘の庭園で見つけた「猪の目」(いのめ)。ハート形に見えます。
1962年生まれ
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。

特選1

三升の米研ぐ夜明け秋祭すずしろゆき

選評

秋祭に向け、早朝から三升もの米を研ぐ人がいる。
炊き上がったご飯がきれいに無くなる時も又、爽快。

特選2

泥の香の農具小屋出て秋祭加良太知

選評

泥の匂いのする納屋から、直接出向く秋祭。
周囲には稲が輝き、実りの季節の労働も偲ばれる御句。

特選3

秋祭り道祖神にも置く駄菓子蓮田 椿

選評

秋祭で配る駄菓子を道祖神に供えたのは、子どもであろうか。
道端の神をも大切にできる村は、きっと平和。

佳作

花婿の殊に勇めり秋祭工藤遊子
杉木立抜けて青空秋まつり勝本熊童子
秋祭踏切わたる鯨舟楠丘
神名備の樟の根あらは秋祭茫々
浜風に踊る電球村祭男爵藷
田んぼにもお神酒ふるまひ村祭酒梨
笛宮司太鼓和尚や秋祭葦たかし
秋祭り園児の飾る樽神輿寺津豪佐
能面に泣く子笑ふ子秋祭桜鯛みわ
早引けも休暇もよろし村祭まこと
万灯に万のたましひ秋祭遊羽女
棚田までひびく笛の音秋祭古本屋
祝砲の上がる青空秋まつり茉莉花
先導の笛の音澄みし秋祭柚木みゆき
高々と空へ竿立て秋祭無弦奏

気になる句

秋祭べつ甲飴の尖りゆく
秋祭と鼈甲飴の取り合わせに惹かれたものの、最初「(尖り)ゆく」が分からなかった。
作者は実演販売を見ているのかもしれないが、「尖りゐる」等、経過より「今」を詠む方がよいのでは。

選者吟

それぞれの畦道を来し秋祭槙子

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