3月の投句箱

卒業

「卒業」

三月、全課程を修了して晴れやかに学窓を巣立つ。
卒業時の感慨や涙を知らない大人は居ないはず。
因みに、「落第」も春の季語。 

今回の選者

長谷川槙子(はせがわ まきこ)
鎌倉一条恵観山荘の庭園で見つけた「猪の目」(いのめ)。ハート形に見えます。
1962年生まれ
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。

特選1

卒業子光の中へ退場す香舟

選評

式場の扉を開けると、確かに眩しい程の光を感ずる。小さな出口を一人ずつ抜けて、明るい未来へと巣立ちゆく生徒たち。
省略の効いた「光の中へ退場す」が巧い。

特選2

総代のこゑは未来へ卒業すはぐれ雲

選評

総代の読み上げる式辞の内容が未来へ向かっている、というなら凡庸。
この句の場合、「こゑは未来へ」の措辞が清々しい。若者の、よく通る澄んだ声が聞こえる。

特選3

卒業や渡り廊下を振り返り田畑 整

選評

渡り廊下は、学校に付き物。校舎と校舎を結ぶ、半分戸外のような不思議な空間である。作者には、其処にきっと多くの思い出があるに違いない。読者にそう想わせる。

佳作

卒業の第二釦の色褪せずしんい
卒業の朝の厚切りぶどうパン中島容子
卒業歌仮設の講堂揺らしをりしんい
制帽を高く投げ上げ卒業す石塚彩楓
マドンナに憧れたまま卒業すかとしん
卒業の背を海光照らしけりすずしろゆき
輪唱の揃つて終はる卒業式久森ぎんう
校庭の木々伸びやかに卒業す一日一笑
山道を通ひし月日卒業歌藤田康子
卒業や最後に詰める玉子焼晴菜ひろ
安部公房借りたるままに卒業す雅一
じゃんけんはいつも後出し卒業す遊羽女
三番の歌詞知らぬまま卒業すノセミコ
卒業の日の図書館の静かなるキートスばんじょうし
仄かなる鶏舎のにほひ卒業歌げばげば

気になる句

卒業式果てて子等の輪母の輪も
卒業の別れを惜しむのは子も親も同じ、という訳ですね。着眼のよさに惹かれました。
最後の「も」が惜しい。「保護者の輪」とでもしてみては。

選者吟

海光へ正門開き卒業す槙子

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