11月の投句箱

返り花

「返り花」

葉を落としきった枝に一二輪の桜の花。
春とはまた別の風情です。

今回の選者

山本素竹(やまもと そちく)
山本素竹のアイコン
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など

特選1

枯れながら四五輪ほどの返り花釜眞手打ち蕎麦

選評

老木というか枯れている部分のある桜の枝に返り花。枯れているところに目を留めて一句となった。

特選2

返り花富士を小さくしてゐたり琉奏

選評

なんと雄大な景色だろうか。そして、富士山でさえも脇役にしてしまう「返り花」が頼もしい。

特選3

二百本並木の一枝返り花夏海

選評

返り花はそう頻繁に見ることはできない。掲句のように足を使わなければ出会えないのだ。返り花の背景が描かれている。

佳作

茶屋街の暗き石段返り花沙那夏
返り花薄桃色に日を透かす石塚彩楓
返り花存続決まる渡し船多々良海月
老木の枝先ひそと返り花伊藤順女
返り花一人写真を撮りにけり参山
返り花俯くやつが目立ちをり林山千港
澄みわたる空にきえゆく返り花柿内澄子
返り花たった二日で逝った姉千代之人
一輪のしろきひかりや返り花かとの巳
一二輪見上げ風の香返り花原島夏翠
曇り空ほころぶように返り花とんぶりっこ
紅白帽囲む古木の返り花創遊
温暖化いや違うかな返り花山口雀昭
逆光に見失ひけり返り花水希
塀の上風に震える返り花艀舟

気になる句

返り花気づく人無く散りにけり
人知れぬままに散りけり返り花
もともと返り花が散るとき……などよっぽど運が良くなければ出くわすこともないであろう。つまり散った後の景と思われるが良く似ている。選句をする身としては残念ながらどちらも採らないことになる。
俳句では新鮮に感じるものに魅力がある。つまり発見の価値なのである。一つの句会で二つの同じような句では、無きに等しい。
想像して作るとそういうことが起こりやすい。

選者吟

青空に雲の速さよ返り花素竹

Web投句箱への投句はこちらから

今月のweb投句はこちらのページで募集しています。
ふるってご参加ください。