3月の投句箱

蒲公英(たんぽぽ)

「蒲公英(たんぽぽ)」

今回の選者

田丸千種(たまる ちぐさ)
田丸千種のアイコン
日本伝統俳句協会本部講師 俳歴30年
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞

特選1

たんぽぽの絮退院の母の手へ薩摩っぽ

選評

病院の玄関を出て駐車場までの道すがら。久しぶりの空を眩しむ母の手に、どこからともなく飛んで来た蒲公英の絮が舞い落ちる。幸先のいい退院である。
幼子を詠む句の多い「蒲公英」だが、こんな風景も陽春ならではの一コマ。

特選2

たんぽぽや下城の武士の裾短か祥子

選評

タイムスリップ?撮影所?いやいや作者には下城の武士が見えたのである。先人にも「鳥羽殿へ五六騎急ぐ野分かな」(蕪村)「お小姓に惚れたはれたや白重」(虚子)等々、句作は自由。登城を許されたばかりの若き武士が一日を終えた安堵とともに家路に着く。短い裾が何とも初々しい。道端に咲くたんぽぽが時空を越えた一句にリアリティを与えている。

特選3

蒲公英の絮吹くその夜燭を吹く蕨 一斗

選評

夜、ろうそくの火を吹き消した時に、そういえば今日、同じように蒲公英の絮を吹いたなあと思い出したのである。だから何ということではない。それなのに独立した二つの事柄をつなげてみると、何だかシュール。白日の下に絮を吹く口と、夜陰に炎を吹き消す口。昼と夜、明と暗、善と悪……?!単純明快な「蒲公英」という題から面白い句が出た。

今月の気になる1句

広つぱにぽぽぽと咲ふたんぽぽぽ
姿かたち、名まえまでも愛らしいたんぽぽ。そんな「たんぽぽ」らしさがリズミカルに表現されている。句末に「ぽ」をおく工夫も、たんぽぽなればこそ許される明るい仕上がり。
ただ、どうしても「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」(坪内稔典)が浮かんでしまい、「ぽぽ」に着目した句を選ぶのは難しい。もちろん作者も知ってのうえでの挑戦だっただろう。気になりつつも、「ごめんなさい」した句でした!

佳作

 

たんぽぽや双子の睡る乳母車今村征一
蒲公英やたんぽぽ組の小さき椅子英世
大鍋に蒲公英甘く煮詰めつつQ太郎
蒲公英の夕日の色を摘みにけり杉森大介
たんぽぽをぴょんとスキップ通学路芽衣
はびこつてゐてたんぽぽんのうとまれず鷹の爪
タンポポの葉はギザギザで矢印で竹久七海
蒲公英の黄が眩しくてうれしくてたつき
たんぽぽの絮が先客ベンチかな風来子
蒲公英の一番花に茎のなきこがね
蒲公英やシャター閉す美容院
山盛りのタンポポサラダ香りくるヨハンナ
たんぽぽの絮吹き終へてひとりかな
犬の鼻くすぐる風や蒲公英黄りん
蹴上がりや蒲公英の空駆け上る

選者吟

たんぽぽを一輪二輪三輪車千種

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