8月の投句箱

新涼

「新涼」

秋初めて催す涼しさ。
秋涼し、秋涼とも

今回の選者

小川龍雄(おがわ たつお)
小川龍雄のアイコン
1952年生まれ
1978年から句作
日本伝統俳句協会理事

特選1

新涼やひとり遊びの稚の声ママさん

選評

やや児が独り言を言いながら遊んでいる。その声も涼しげだ。

特選2

新涼や京の町家の通し土間dragon

選評

京都の夏は暑い。やっと秋になり、町屋の細長い通し土間に新涼の風が入る頃には生き返ったような気持にもなるのではなかろうか。

特選3

周防灘沖に国東涼新たかぐら

選評

山口県周南地方の面する周防灘から少し沖に出ると、空気の澄んだ日であれば大分県国東半島を望むことが出来る。新涼の頃の空気感も感じられる。

佳作

新涼や枝より薄き枝の影砂山恵子
新涼や作務に勤しむ若き僧トンちゃん
青空のジョギングロード秋涼し千葉時郎
さくさくと刻むパセリや秋涼しプリン
新涼の子らの寝息のたしかなりはぐれ雲
更紗裁つ鋏の音や秋涼し香舟
新涼や巨船曳きたるタグボート拓路
新涼や山路三里も苦にならず遊亀子
新涼や居留守の人の高鼾朔風
新涼の社の奥の闇しずか八十二
新涼や転校生は帰国子女綉綉
新涼やアートの島に降り立ちぬ照波
オペ室へ続く廊下や秋涼し菊池洋勝
新涼や窓いつぱいに瀬戸の海高須翔光
新涼や石鎚山に深呼吸鳴門真希

気になる1句

秋涼しツクツクボウシと水着あと
秋の季題が二つ(秋涼し、つくつくぼうし)、夏の季題が一つ(水着)で関連性もなく季題が三つ並んだだけになっている。
秋の涼しさに何を感じたのか、つくつくぼうしの声に何を想ったのか、水着あとに何を思い出したのか、それぞれを五七五に纏めれば俳句が三つ出来る。

選者吟

新涼や谷戸の奥なる風の路龍雄

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