12月の投句箱

クリスマス

「クリスマス」
すっかり年中行事として定着した「クリスマス」。
クリスマスデコレーションされた町は子供も大人もワクワクさせてくれます。

降誕祭、生誕節、生誕祭、聖夜、聖樹(クリスマスツリー)などという言い方もあります。

今回の選者

田丸千種(たまる ちぐさ)
田丸千種のアイコン
日本伝統俳句協会本部講師 俳歴30年
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞

特選1

聖夜劇じっとしてない木のひとり彩楓(さいふう)

選評

園児たちのクリスマス劇。おしゃまで大人顔負けの演技をする子や、たどたどしい子、シャイな子も……。
中でも、もみの木?役の子が落ち着かない。あらぬ方へ動いたりよそ見をしたり……。
「木の一本」ではなく「ひとり」としたところがユーモラス。でも、大丈夫。クリスマスの祝福はどの子にも等しく訪れるから……。

特選2

クリスマス子供たちみな翼生え佳月

選評

子供たちに翼が生える……?
これも、聖夜劇なのかもしれない。が、詠いぶりからは、子どもたちが夜空へ羽根を広げてサンタを迎えに行こうとしている光景が想像された。
思い切った表現もクリスマスのワクワク感なればこそ。未来へ羽ばたく子どもたちは皆天使だ。

特選3

AIとチェスする聖夜静もれる山梔子

選評

近ごろ盛んなAI対決。俳句を作るAIも日進月歩だそうだ。
この句、「チェス」というところが西洋的雰囲気を醸し出してクリスマスにふさわしい。
一人で過ごすクリスマスをAI相手にチェスをする。ツリーの灯が点滅するのみの静かな夜が更け、熟考は続く。
もはや近未来とも言えないリアルなクリスマス風景なのだろう。

佳作

難民も御子も眠れる聖夜かなふじこ
街はみな甘い香りのクリスマス城内幸江
紅きもの落つ点滴の聖夜かな猫団子
聖堂の椅子飴色や聖夜の灯モペット
蝋燭の消えし匂ひもクリスマス蕨一斗
クリスマスソング切なき唄もあり隣安
聖堂の門開け放つクリスマスdragon
一番星待ちて聖樹の完成すノエル
クリスマス柄の紙袋の街へ猩々木
ラテン語の聖歌ながるるクリスマスみいこ
くちひげの似合わぬ父のクリスマス甲賀忍者
仙人も天狗も里にクリスマスおけら
とても大き小児病棟の聖樹かな吉野三子
船上の貴婦人となるクリスマス京おんな
子羊の立ち往生も聖夜劇遙夢

今月の気になる1句

老妻の意識回復クリスマス
物語か映画のような「クリスマスの奇跡」。本当によかったですね!しかもクリスマスの日に!
……と誰もが思う感動的な出来事だ。ただ、残念ながら、事実がそのまま俳句になるとは限らない。
絵空事でも胸を打つ仕上がりになることがあるから、俳句は難しい……。
余りにもストレート過ぎる表現で、ごめんなさいした1句でした。

選者吟

灯ともせるキャビンに一つづつ聖夜千種

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