「紅葉」
秋が深まるにつれ、山野ばかりではなく都会でも街路樹が色づき、美しい季節になります。皆さんの「紅葉」の風景をご投句ください。
「紅葉(もみじ)」「黄葉(もみじ)」「紅葉(こうよう)」「夕紅葉」
「むら紅葉」「紅葉川」「紅葉山」「紅葉狩」「観楓」
「紅葉且つ散る」など紅葉を使った言葉がたくさんあります。
ただし「紅葉散る」は冬の季題となりますので、ご注意を!
今回の選者
田丸千種(たまる ちぐさ)
日本伝統俳句協会本部講師 俳歴30年
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞
特選1
天井より龍迫りくる紅葉寺京おんな
選評
真新しい色鮮やかな天井絵と解釈しても面白さはあるが、黒ずんだ天井のかすれかかった龍を想像した。
明るい境内から小暗い堂へ一歩踏みこむと、古りてなお迫力ある龍が天井から身に迫る。
紅葉と寺という絵はがき的な素材ながら、龍を配して、歴史と格調を感じる句となった。
明るい境内から小暗い堂へ一歩踏みこむと、古りてなお迫力ある龍が天井から身に迫る。
紅葉と寺という絵はがき的な素材ながら、龍を配して、歴史と格調を感じる句となった。
特選2
谿紅葉宿の主は鬼の裔と本陣
選評
広辞苑では「鬼」とは「隠(おに)」で、姿が見えない意、とある。
嘘かまことか、主は人の姿をした魑魅魍魎か・・・と、宿での夜話を遊ぶ。山深くめったに人の通わない温泉宿。
そしてそこから眺める鮮やかな紅葉。紅葉そのものを説明せずに、「鬼」に語らせたところが妙味。
嘘かまことか、主は人の姿をした魑魅魍魎か・・・と、宿での夜話を遊ぶ。山深くめったに人の通わない温泉宿。
そしてそこから眺める鮮やかな紅葉。紅葉そのものを説明せずに、「鬼」に語らせたところが妙味。
特選3
黛の稚児の行列紅葉晴れ吉野三子
選評
稚児行列は、きらびやかな衣裳と冠をつけて練り歩く姿が愛らしい。
そんな稚児の象徴として額に黒丸の殿上眉に着目。
爽快な大秋晴れと稚児のひたいの小さな眉をポイントに、全景オールカラーのまばゆい一句。
そんな稚児の象徴として額に黒丸の殿上眉に着目。
爽快な大秋晴れと稚児のひたいの小さな眉をポイントに、全景オールカラーのまばゆい一句。
佳作
一つとて同じ色無し紅葉山クマクマ
初紅葉根方にひろげ骨董市せいは
中腹に塔の一重を紅葉山蕨一斗
カーテンのなき山荘の紅葉かな後の月
栃黄葉おおらかに道曲がりたる祥
礎石てふ石の平らや草紅葉みやこ
地滑りの生傷深き紅葉山こいちゃん
山裾に父の里あり紅葉鮒句駄乱
曾祖父の播きし南京櫨紅葉秋山白兎
叡山の水引く日吉の紅葉狩一二三
浅草を紅葉踏み行く人力車銀雨
後戻り出来ぬ吊り橋谷紅葉はる
被災地のことさら早き紅葉かな風来子
且つ散れるもみぢ月光降り止まず今村征一
山門や風の磴置く夕紅葉藤椙大都
初紅葉根方にひろげ骨董市せいは
中腹に塔の一重を紅葉山蕨一斗
カーテンのなき山荘の紅葉かな後の月
栃黄葉おおらかに道曲がりたる祥
礎石てふ石の平らや草紅葉みやこ
地滑りの生傷深き紅葉山こいちゃん
山裾に父の里あり紅葉鮒句駄乱
曾祖父の播きし南京櫨紅葉秋山白兎
叡山の水引く日吉の紅葉狩一二三
浅草を紅葉踏み行く人力車銀雨
後戻り出来ぬ吊り橋谷紅葉はる
被災地のことさら早き紅葉かな風来子
且つ散れるもみぢ月光降り止まず今村征一
山門や風の磴置く夕紅葉藤椙大都
今月の気になる1句
ドーナツの穴から浸みる紅葉かな
日本人とは深いつきあいの紅葉は、それゆえに平凡な句になりがちで、そこが難しい。
常套に陥らないために、それぞれに苦心して投句されたと思うが、この「ドーナツ」にもちょっと惹かれた。ただ、「浸みる」が何に浸みるのか分かりにくかった。
単純に「ドーナツの穴からのぞく紅葉かな」くらいでよかったのでは、と残念でした。
常套に陥らないために、それぞれに苦心して投句されたと思うが、この「ドーナツ」にもちょっと惹かれた。ただ、「浸みる」が何に浸みるのか分かりにくかった。
単純に「ドーナツの穴からのぞく紅葉かな」くらいでよかったのでは、と残念でした。
選者吟
一筋の黄葉明りにショーウィンドウ千種
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