10月の投句箱

紅葉

「紅葉」

秋が深まるにつれ、山野ばかりではなく都会でも街路樹が色づき、美しい季節になります。皆さんの「紅葉」の風景をご投句ください。

「紅葉(もみじ)」「黄葉(もみじ)」「紅葉(こうよう)」「夕紅葉」
「むら紅葉」「紅葉川」「紅葉山」「紅葉狩」「観楓」
「紅葉且つ散る」など紅葉を使った言葉がたくさんあります。
ただし「紅葉散る」は冬の季題となりますので、ご注意を!

今回の選者

田丸千種(たまる ちぐさ)
田丸千種のアイコン
日本伝統俳句協会本部講師 俳歴30年
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞

特選1

天井より龍迫りくる紅葉寺京おんな

選評

真新しい色鮮やかな天井絵と解釈しても面白さはあるが、黒ずんだ天井のかすれかかった龍を想像した。
明るい境内から小暗い堂へ一歩踏みこむと、古りてなお迫力ある龍が天井から身に迫る。
紅葉と寺という絵はがき的な素材ながら、龍を配して、歴史と格調を感じる句となった。

特選2

谿紅葉宿の主は鬼の裔と本陣

選評

広辞苑では「鬼」とは「隠(おに)」で、姿が見えない意、とある。
嘘かまことか、主は人の姿をした魑魅魍魎か・・・と、宿での夜話を遊ぶ。山深くめったに人の通わない温泉宿。
そしてそこから眺める鮮やかな紅葉。紅葉そのものを説明せずに、「鬼」に語らせたところが妙味。

特選3

黛の稚児の行列紅葉晴れ吉野三子

選評

稚児行列は、きらびやかな衣裳と冠をつけて練り歩く姿が愛らしい。
そんな稚児の象徴として額に黒丸の殿上眉に着目。
爽快な大秋晴れと稚児のひたいの小さな眉をポイントに、全景オールカラーのまばゆい一句。

佳作

一つとて同じ色無し紅葉山クマクマ
初紅葉根方にひろげ骨董市せいは
中腹に塔の一重を紅葉山蕨一斗
カーテンのなき山荘の紅葉かな後の月
栃黄葉おおらかに道曲がりたる
礎石てふ石の平らや草紅葉みやこ
地滑りの生傷深き紅葉山こいちゃん
山裾に父の里あり紅葉鮒句駄乱
曾祖父の播きし南京櫨紅葉秋山白兎
叡山の水引く日吉の紅葉狩一二三
浅草を紅葉踏み行く人力車銀雨
後戻り出来ぬ吊り橋谷紅葉はる
被災地のことさら早き紅葉かな風来子
且つ散れるもみぢ月光降り止まず今村征一
山門や風の磴置く夕紅葉藤椙大都

今月の気になる1句

ドーナツの穴から浸みる紅葉かな
日本人とは深いつきあいの紅葉は、それゆえに平凡な句になりがちで、そこが難しい。
常套に陥らないために、それぞれに苦心して投句されたと思うが、この「ドーナツ」にもちょっと惹かれた。ただ、「浸みる」が何に浸みるのか分かりにくかった。
単純に「ドーナツの穴からのぞく紅葉かな」くらいでよかったのでは、と残念でした。

選者吟

一筋の黄葉明りにショーウィンドウ千種

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