2018年4月のお題「桜」一切
桜に関した季題でしたら、何でもオーケーです!
今回の選者
田丸千種(たまる ちぐさ)
日本伝統俳句協会本部講師 俳歴30年
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞
第26回日本伝統俳句協会賞受賞
句集『ブルーノート』で与謝蕪村賞奨励賞
特選1
花吹雪箏の譜面の舞ひ上がりモペット
選評
花時の公園に置かれた仮設舞台。思わぬ突風に落花が舞い、譜面までもさらわれてしまう。
「舞い上がり」の止め方がいい。読者までも観客のひとりとなって、譜面のゆき先を目で追ってしまう。花吹雪と箏の雅な世界の中で、うつつの人間達が慌てふためいている様子がユーモラス。
「舞い上がり」の止め方がいい。読者までも観客のひとりとなって、譜面のゆき先を目で追ってしまう。花吹雪と箏の雅な世界の中で、うつつの人間達が慌てふためいている様子がユーモラス。
特選2
御衣黄や女嫌ひの男の子比々き
選評
御衣黄(ぎょいこう)はご存知の方も多いだろうが、緑の花びらを持つ桜。その満開の姿は、力強い華やぎが感じられる。女嫌いは事実なのか本心の裏返しなのか。感じやすい年頃の少年を、桜ながら紅を持たぬ御衣黄に語らせているところが、逆説を含んで心憎い詠みっぷり。
特選3
アトリエに花冷のロッキングチェアー杏樹
選評
作者自身のアトリエかもしれないが、一句の印象は、使う人のいないアトリエを想像させる。もはや人の体温は感じられぬ空間に、なほ主がいるがごとくに置かれたままのロッキングチェアー。「花冷」という季題にたくさんの片仮名を取り合わせて、甘すぎない洒落た雰囲気が表現されている。
佳作
ぱちぱちと弾く篝や宵桜雅奇
鳥達のどこへ宿るや花の雨野原早織
玄室を花のひとひら石舞台銀雨
初花や去年の日記読み返し平和翁
夜桜や祖父母仲良くしてゐたり中原太郎
一枝は湖水へ向ふ櫻かな綉綉
花の窓老いたる猫の一つゐてねこまねき
いっせいに亀の目光る花の昼MAY
一風に散りきらんとし桜散る風来
思ひ出に袖を通すや花衣おぼろ月
一杯のコーヒー庭の朝ざくらしづ女
隧道を出て来る花の疎水船桔梗
ぐづぐづと恙ふはりと落花かなきゆみ
楽団の黒き背に背に飛花落花赤猫
桜散る窯場の屋根は苔むしてdragon
鳥達のどこへ宿るや花の雨野原早織
玄室を花のひとひら石舞台銀雨
初花や去年の日記読み返し平和翁
夜桜や祖父母仲良くしてゐたり中原太郎
一枝は湖水へ向ふ櫻かな綉綉
花の窓老いたる猫の一つゐてねこまねき
いっせいに亀の目光る花の昼MAY
一風に散りきらんとし桜散る風来
思ひ出に袖を通すや花衣おぼろ月
一杯のコーヒー庭の朝ざくらしづ女
隧道を出て来る花の疎水船桔梗
ぐづぐづと恙ふはりと落花かなきゆみ
楽団の黒き背に背に飛花落花赤猫
桜散る窯場の屋根は苔むしてdragon
今月の気になる1句
魂のかたちで揺れし花筏
「魂のかたち」……、言葉にするのは簡単だが、その姿を思い浮かべようとすると形をなさない。つまり水に移ろうばかりの花筏がそれであるというのだろう。そんな把握には魅力を感じたが、如何せん「桜」と「魂」には、つきすぎの匂いが……。やや観念に傾いてしまった感があって、残念ながらごめんなさいでした。
選者吟
花冷や頬に掌をあて観世音千種
Web投句箱への投句はこちらから
今月のweb投句はこちらのページで募集しています。
ふるってご参加ください。