3月の投句箱

「春泥」

春雨や雪解けでできたぬかるみ。
子供たちにとっては楽しい遊び場となるが、卒業式や入学式の和服のお母さんたちにとってはちょっと厄介。

今月の選者

𠮷村玲子(よしむられいこ)
紺色のニットカーディガンを着た、ボブカットで笑顔の女性の写真
(公社)日本伝統俳句協会評議員、「花鳥諷詠」編集委員
日本伝統俳句協会関西支部企画部長、ホトトギス同人
円虹会員、三田(さんだ)俳句協会会長

庭に巣箱をおいて、毎年四十雀が巣立って行くのを楽しみにしています。
ときには雀も巣立っていきますが、巣の出来具合の違いも面白いです。

特選1

春泥をまたぎ転職一日目たま走哉

選評

人間関係や、ご自身の周りのいろんなことを考えて転職を決断されたのだろう。
が、環境を一新する転職は、家族を抱えておられたらなおさらのこと勇気のいることだろう。これまでのもやもやを断ち切り、春泥をまたいで開ける未来を応援する。

特選2

校旗掲揚春泥のユニフォーム弥栄弐庫

選評

春の選抜高校野球の甲子園球場での優勝場面を思い浮かべる。優勝校の校歌の流れる中、母校の校旗が掲揚される誇らしい瞬間だ。
グラウンドに整列し、見上げる球児のユニフォームについた春泥は、優勝までの激闘を物語っているのだ。

特選3

春泥や数年振りに村に医師多々良海月

選評

山深い過疎の村の雪解けでできた春泥なのだろう。アスファルトで固められた都会とは違う風景である。数年も待ちわびた医師がようやく村に来てくれたのだ。
客観的に描いているが、村人の安堵がよく伝わってくる。

佳作

春の泥すらも懐かし吉野山鹿の子
春泥や脚絆眩しき二人連れ
春泥や尻の汚れの子等の列富雪
春泥を駆けて合格母へ告ぐ新濃 健
春泥を跳ね上げ車夫は津軽弁勝本熊童子
春泥にひとすぢ空を映す水NOGI
陽を含む田の春泥の黒々と無弦奏
春泥の羊の色に乾きけり菫久
春泥を踏み出稼ぎの父帰る新濃 健
廃屋の沈みゆくかに春の泥堀 雅一
春泥の光を鳥の歩みかな佐久凡太郎
草踏んで春泥踏んで草踏んで釜眞手打ち蕎麦
抜きたての父の野菜と春泥と立部笑子
ひと呼吸おき春泥を飛び越えるえだまめ
春泥の乾きし靴の深き反り岡崎梗舟

気になる句

春泥で遊んだ雑種を躱す主人
俳句は、五七五のリズムに乗せるのが基本であるが、この句は五八六で、字余りの句になっている。
まずは工夫して五七五のリズムに乗せること。
また、泥まみれの犬を躱すご主人の姿を描いておられるが、ご自分の事として詠んでもよい。その方が臨場感が増すので、俳句では許されている。

《添削例》 春泥を遊び来し犬躱したる

選者吟

春泥や家族総出の宮参り玲子

Web投句箱への投句はこちらから

今月のweb投句はこちらのページで募集しています。
ふるってご参加ください。