1月の投句箱

夜明けの風景

「初夢」

以前は二日の夜から三日の朝にかけて見る夢だったが、今は、元日の夜から二日にかけて見る夢をいう。
いずれにしても、良い夢を見ると一年間楽しく暮らせそう。

今月の選者

𠮷村玲子(よしむられいこ)
紺色のニットカーディガンを着た、ボブカットで笑顔の女性の写真
(公社)日本伝統俳句協会評議員、「花鳥諷詠」編集委員
日本伝統俳句協会関西支部企画部長、ホトトギス同人
円虹会員、三田(さんだ)俳句協会会長

庭に巣箱をおいて、毎年四十雀が巣立って行くのを楽しみにしています。
ときには雀も巣立っていきますが、巣の出来具合の違いも面白いです。

特選1

初夢の透けて見えたる寝顔かな参山

選評

初夢を見ている人の表情から、いろんな夢が想像できる。微笑んでいる子供の表情なら、きっと楽しい夢を見ているのだろう。「初夢の透けて見えたる」の発見がとてもよい。

特選2

初夢の能登に競り合ふ大漁旗芙蓉

選評

大漁旗をそれぞれの船が掲げて帰って来る晴れやかな風景。それが大地震のあった能登ということで、今ではない昔の風景であるのが哀切。この初夢が正夢となってほしいものである。

特選3

初夢や日の移りゆくモネの庭杏乃みずな

選評

フランスの画家、クロード・モネは、ジヴェルニーに自身が思い描いた広大な庭を造った。日本風の橋がかかる池の一連の睡蓮の絵はここで生まれた。
日の移りゆく美しい色彩に溢れた庭を巡りゆく初夢。目覚めた後もモネの光に包まれ幸せな気分だったことだろう。

佳作

初夢の覚むれば元の老一人まこと
抑留の逞しき父初夢に坂口いちお
初夢に重き歳時記貰ひけり里山まどか
寝る前にみたき初夢デッサンし鬼本余覚
初夢やもう未来へと帰らねば珍酒
初夢やみんな生きてるわらってる節子
初夢が正夢になる新学期浦城亮祐
初夢や富士を三歩で登りきるカミムラフサコ
初夢の海は尊く光りをり城内幸江
初夢や実家はネッシー飼うらしい清瀬ハイジ
初夢や丁度いいとこ猫パンチ春雪
初夢に出汁の匂いの混ざりけり渡辺香野
初夢の戦さの終はる大地かな葦たかし
初夢に目覚めし妻の上機嫌砂山恵子
初夢は浅き眠りのあはひより高木音弥

気になる句

初夢やピンチにぱつと目覚むかな
初夢の中で、ピンチに陥り「どうしよう」と思った瞬間目が覚めた。「夢でよかった」とほっとしたことだろう。
が、この句は、内容に捕らわれて「や」「かな」の入った句になった。
〈初夢やピンチにぱつと目覚めたる〉として、これを回避しよう。見直しが大切。

選者吟

初夢のライオンに乗る少女かな玲子

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