11月の投句箱

小さめの熊手の写真

「熊手」

酉の市に行くとお店に並んでいる色鮮やかな熊手に目を奪われます。
なかなかお高い熊手には手が届きませんが、いつか奮発してお店の人に手締めをして貰いたいと思っています。

今月の選者

真篠みどり(ましの みどり)
紺色のシャツを着た、長髪の人物が笑顔を浮かべている写真
日本伝統俳句協会評議員・関東支部埼玉部会長
卯浪俳句会 大宮教室所属

自家製ぬか漬けで晩酌をするのが、帰宅後の楽しみです。

特選1

人混みに呑まれ遠のく熊手かな小田毬藻

選評

今年は私も浅草の酉の市に行ってきましたが、凄い人出でまさにこの句のような状態でした。
一瞬、今年は酉の市まで辿り着けないのでは、とも思いましたが、そんな気持ちを上手く表現してくれました。お目出たい熊手を買いに来たのに、大変な目に合っているというところも面白いです。

特選2

残像のいつまで千の熊手見て宇佐美好子

選評

あの眩しいほどの熊手市の輝きをいつか句にしたいと思っていましたが、作者は「残像」を使って、見事にあの輝きを表現されました。「いつまで」「千の熊手」の言葉の選択も素晴らしいです。

特選3

手拍子の起きぬ熊手を買ひにけり塩野谷慎吾

選評

今まで熊手を買ったことがないので、どれくらいの熊手から手締めをしてくれるのか分からないのですが、あまり小さいものは、手締めをして貰えないのでしょう。
結構良い値段だったのに手締めが無くて、がっかりしているのか、最初から期待はしていなかったのか、作者の気持ちがいろいろと想像されます。最後、けりで締めたことで、より諧謔味が出たと思います。

佳作

大願を小さき熊手に託しけりまこと
きりりとは締まらぬ気温豆熊手藤田ゆい
めでたさの混み合つてゐる熊手かな多々良海月
それそれと手締め拍子木熊手市一路
しあはせは努力の結果古熊手田辺富士雄
改札を掲げて通る熊手かな塩野谷慎吾
特大の熊手営業第三課ひでやん
通勤の鞄に小さき熊手かな老人日記
大熊手一揆のごとくかかげをり勝本熊童子
ねだられて小さき熊手を買ってやり青野すすき
頭上より落ちぬばかりの大熊手トヨ
人間も熊手も揺れる荒川線木村隆夫
身の丈に合わぬ熊手を掲げおり渡辺香野
大熊手何回も待つエレベーター城内幸江
頼まれて一緒に選ぶ熊手かなくつの した子

気になる句

真ん中にラスボスのごと熊手買ふ
熊手売りの露店の真ん中にはその店で一番大きな熊手が飾られていることが多いですが、言われてみると確かにラスボス感があり、上手く例えられたと思います。
ただ、下五はシンプルに大熊手とした方が、より熊手に焦点が当たって良かったのではと思いました。

選者吟

はとバスのガイドのやうに持つ熊手みどり

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