9月の投句箱

食卓の焼サンマ

「秋刀魚」

初心の頃、秋刀魚の句を出すと師匠の橋本くに彦先生が「焼いちゃいましょう」と言って「秋刀魚焼く」と添削されたことを思い出します。
最近は、昔のように脂が乗って立派な秋刀魚を見ることが少なくなってしまったのが寂しいです。

今月の選者

真篠みどり(ましの みどり)
紺色のシャツを着た、長髪の人物が笑顔を浮かべている写真
日本伝統俳句協会評議員・関東支部埼玉部会長
卯浪俳句会 大宮教室所属

自家製ぬか漬けで晩酌をするのが、帰宅後の楽しみです。

特選1

日常を確かめたくて秋刀魚焼く英ルナ

選評

日々慌ただしく過ごしていると、当たり前の生活を見失ってしまう時がよくあります。この句を読んで、日常に立ち戻るのには、確かに秋刀魚を焼くのが良いと思いました。秋刀魚を焼くことには、そんな力がありそうです。

特選2

オホーツクのひかり引き抜く初さんま木村隆夫

選評

昨年はオホーツク海でも秋刀魚が沢山獲れたとのこと。水面に光る秋刀魚の群れを網で引き上げる場面を、ひかり引き抜くとされたことで、秋刀魚やオホーツクの美しさが表現されていると思います。

特選3

特売にますます光る秋刀魚かなたま走哉

選評

いくら立派で美味しそうな秋刀魚も一匹500円を超すと手を出し辛いですが、特売となれば、お客さんの目も輝き出します。特売によって秋刀魚が増々光ると詠まれたのが上手いと思いました。

佳作

七輪に並ぶ秋刀魚の目は澄んで沙那夏
公団の廊下は長し秋刀魚焼く東京堕天使
威勢よき濁声尖る秋刀魚競りリカ
秋刀魚焼く匂い一嗅ぎ飯一膳愛生園風来坊
白銀に青の走れる秋刀魚かな石塚彩楓
一本の秋刀魚だいじに持ち帰る木村隆夫
秋刀魚焼く火災報知器見上げつつ草夕感じ
母の居ぬ厨に秋刀魚焼いてをり石塚彩楓
火に落ちる脂少なくなる秋刀魚蛾触
箸置きも二つとなりて初秋刀魚蔵豊政
初秋刀魚一応尻尾はみ出して珍酒
ばちばちと脂燃やして焼く秋刀魚福井桔梗
食卓の化石の如き秋刀魚かな松尾なおゆき
さんま焼く向かふ三軒両隣悠久
けふこそは買はむと決めし秋刀魚かな赤福餅

気になる句

目の黒い秋刀魚生き生き焼かれをリ
秋刀魚が生き生きと焼かれるという表現が面白いと思いました。きっと立派で新鮮な秋刀魚を焼いたのでしょう。ただ「をり」が文語なので「黒い」も「黒き」と合わせた方が良いと思いました。

選者吟

角皿の角に渡りてゐる秋刀魚みどり

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