「万緑」
「万緑叢中紅一点」という王安石の詩から生まれた季題。
夏は来ぬ。見渡す限りの緑。そのスケールに溺れてみましょう。
今月の選者
池田雅かず(いけだ まさかず)
卯浪俳句教室「卯浪OSAKA」講師
https://unami-osaka.jimdosite.com/
日本伝統俳句協会関西支部企画委員
公益財団法人虚子記念文学館常務理事
精神対話士
https://unami-osaka.jimdosite.com/
日本伝統俳句協会関西支部企画委員
公益財団法人虚子記念文学館常務理事
精神対話士
“ふれあって・こころ・ゆたかに“
たった十七音の言の葉を媒介にして、自然とふれあい、人とふれあい
「今・ここに・生きていること」
その実感と歓びを共感の心でシェアすること。
それが私にとっての俳句です。
特選1
万緑の怒濤に沈む家並かな蒼鳩 薫
選評
まるで大海のようにうねり続く大万緑。マッチ箱のような家がその万緑に溺れるように貼り付く。国土の狭い日本では深山幽谷にも人々の暮らしが息づく。万緑叢中に暮し在り。大自然と人間との共生を詠う句となった。
特選2
万緑や火星に残る水の痕石爽子
選評
万緑と火星。意表を突く取り合わせ。これは隠されたメッセージがありそうだ。太古、火星には水があった。ということは緑も?
「地球人たちよ、このかけがえのない万緑を守るのです」火星人からの言伝が秘められているような。
「地球人たちよ、このかけがえのない万緑を守るのです」火星人からの言伝が秘められているような。
特選3
万緑に子どもできたること叫ぶ参山
選評
世界の中心にではなく万緑に向かって叫ぶ。万緑とは生きとし生けるものの源泉である。私たちが授かる命もこの大自然の営みのひとつ。すべての命は循環しているのだ。つまりこの子も万緑の申し子なのである。万緑への悦びの報告は即ち命への讃歌だ。
佳作
万緑へ億千万の雨の粒菫久
万緑や白き乳房を吸ふ赤子星月彩也華
地図になき村となりけり万緑裡英世
万緑や九十九折なす峠道佐々木宏
万緑や佳境に入る野外劇ポンタロウ
万緑や乳白色の露天風呂酒井春棋
万緑や麓に緩き牛の声夕弥
万緑や吸ひ込む息の青きこと藤田ゆい
万緑にひとつ突き出る天狗岩猿虎
万緑を超え万緑の中走る城内幸江
万緑を背負つて来たる歩荷かな多々良海月
万緑やバードスコープポケットに石塚彩楓
万緑や地球の肺を膨らます砂楽梨
万緑や尾根から尾根の大鉄塔江見 陣暮
万緑の中を分け入る大河かな塩野谷慎吾
万緑や白き乳房を吸ふ赤子星月彩也華
地図になき村となりけり万緑裡英世
万緑や九十九折なす峠道佐々木宏
万緑や佳境に入る野外劇ポンタロウ
万緑や乳白色の露天風呂酒井春棋
万緑や麓に緩き牛の声夕弥
万緑や吸ひ込む息の青きこと藤田ゆい
万緑にひとつ突き出る天狗岩猿虎
万緑を超え万緑の中走る城内幸江
万緑を背負つて来たる歩荷かな多々良海月
万緑やバードスコープポケットに石塚彩楓
万緑や地球の肺を膨らます砂楽梨
万緑や尾根から尾根の大鉄塔江見 陣暮
万緑の中を分け入る大河かな塩野谷慎吾
気になる句
万緑や真っ只中にいて孤独
大自然の中の小さな自分という構図の対照に、万緑のスケール感と作者の心情が伝わってくる句です。ただ気になる点が三つ。
「真っ只中」→「真つ只中」
「いて」→「ゐて」と文語・旧仮名遣いを踏襲しました。
最後に下五は叙情ではなく叙景にしました。「孤独」だと気持ちをストレートに言われれば「そうなんですね」と鑑賞がそこで止まってしまいます。叙景にしてそこから感じる情は受け手に預けてみました。
万緑の真つ只中にゐてひとり
選者吟
落人を祖に万緑の襞に住む雅かず
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