4月の投句箱

公園のブランコの写真

「鞦韆」

「ぶらんこ」「ふらここ」「半仙戯」「秋千」とも。
ぶらんこのある公園に行ってみよう。
見るも良し、乗るも良し。
思い出にちょっぴり浸るも良し。

今月の選者

池田雅かず(いけだ まさかず)
アロハシャツを着た男性の写真
卯浪俳句教室「卯浪OSAKA」講師
https://unami-osaka.jimdosite.com/
日本伝統俳句協会関西支部企画委員
公益財団法人虚子記念文学館常務理事
精神対話士

“ふれあって・こころ・ゆたかに“
たった十七音の言の葉を媒介にして、自然とふれあい、人とふれあい
「今・ここに・生きていること」
その実感と歓びを共感の心でシェアすること。
それが私にとっての俳句です。

特選1

ぶらんこや児の声の無き古団地藤田康子

選評

高度成長期時代、LDKなる間取りの団地に住むことは、当時の憧れのライフスタイルであった。
かつてニューファミリーたちで賑わった団地の公園。今は塗装も剥げ落ち、鎖には錆が目立つぶらんこ。
しかして彼は何も語らず。ただ団地の光陰を見つめ続けている。

特選2

ぶらんこを漕ぐ満月と息合はせ仙蔵

選評

ぶらんこの揺れに合わせて月は近づき遠ざかる。知らず知らずのうちに月と呼吸が合ってくる。
そんな感覚を浮遊する作者。さながら月とのダンシングナイトだ。
「Fly Me to the Moon」…絵本のような一景である。

特選3

ふらここのゆきつもどりつゆめうつつ満月

選評

大人になっても人は何故ぶらんこに乗りたがるのだろう?
人生とは振り子のようなものだ。自分という重さが揺れる。夢と現の落差に揺れる。敢えて平仮名にしたテイストがいい。
そして「つ」の韻を踏む。その軽み、その調べにこちらも夢うつつ。

佳作

ぶらんこは高く少女の脚長く老人日記
赤茶けし手に鞦韆の匂いかな一慎
ふらここやハローワークは明日行く田畑 整
鞦韆を漕ぐ青空に触るるまで鈴木智子
天上の母へ鞦韆高う漕ぐ近江菫花
叱られて空に逃げたし半仙戯佐々木宏
ふららこや頭を越ゆるスニーカー草夕感じ
ぶらんこや伴侶を得たる子の門出蒼鳩 薫
ふらここやあと一漕ぎで得る翼ぶえもん
ぶらんこや前にころがるランドセル松尾なおゆき
ふらここの静かに垂るる月曜日みのる
はじめての鞦韆に身を固くせる工藤悠久
鞦韆や行くか戻るか揺れる意思かとしん
鞦韆に重たき心揺らせしむ参山
鞦韆や揺れて日向へまた影へ東の山

気になる句

鞦韆を止めて始むる恋話
少女たちのコイバナ。こういう舞台には確かにぶらんこがよく似合います。微笑ましい一景に読者もほんわかした気分になる句です。
ただ「始むる」の所を、もう一歩突っ込んだ表現にしてみたいなと。少女たちの表情が見えるように。
例)鞦韆を止めてひそひそ恋話

選者吟

鞦韆や太平洋へひとつ跳び雅かず

Web投句箱への投句はこちらから

今月のweb投句はこちらのページで募集しています。
ふるってご参加ください。