10月の投句箱

木になるドングリ

「木の実落つ」

一陣の風でぱらぱら降るように落ちる木の実

今月の選者

小川みゆき(おがわ みゆき)
氷川丸と薔薇
卯浪講師
日本伝統俳句協会関東支部/副支部長・神奈川部会長
公益社団法人日本伝統俳句協会監事
キャンプが好きな40年来のオールドキャンパーです

特選1

又三郎揺らしているか木の実落つ勝本熊童子

選評

童話めく題材にわくわく感があり楽しくさせる句です。木の実を落としているのは童話から抜け出た主人公だと想像するだけで楽しくなります。

特選2

持て余す一人野宿や木の実落つ清瀬ハイジ

選評

一人キャンプですね。たっぷり時間はあるのですることが無くなります。持ち物に限定があるので日が昇ると起きて暗くなると寝る。きっと木の実が落ちる音を大きく感じたことでしょう。

特選3

惜しみなく木の実を降らす大樹かな愚老

選評

木の実が全部落ちてしまうような木の実時雨の中に立っていたことがあります。とても美しく見事な景でした。惜しみなくという言葉がぴったりです。

佳作

灯火の淡き祠や木の実落つ青田道
木の実落つ脱藩の道駆け行きて閑坐
木の実落つ掃き清めたる寺の庭植村弘
ピザ窯のモザイクタイル木の実落つ暖井むゆき
犬の耳ぴくりと動き木の実落つ春よ来い
もう歌の聞こえぬ園舎木の実落つGONZA
小枝には袴を残し木の実落つ甲賀忍者
木の実落つ一期一会の抹茶席浦城亮祐
引っ越しの少なき荷物木の実落つ千代 之人
木の実落つロールスロイスのボンネット葦たかし
森のカフェ君待つ椅子へ木の実落つ宇宙ひろ子
木の実落つ童女の古き墓三基星月彩也華
城跡の武者の雄たけび木の実落つ古本屋
境内の清掃奉仕木の実落つたまこ
籠り居にこの庭大事木の実降る里山まどか

気になる句

木の実落つやうに夫逝く風残り
木の実が急に落ちてきた時は確かめるために振り向くことがあります。急に音がしてその後はとても静かです。
それを呆気なく死んでしまった夫との別れを季題に託され詠まれていますが、調べが悪いので並び替えました。季題は傍題の「木の実降る」にしました。
「夫逝きて風のみ残り木の実降る」ではいかがでしょうか?

選者吟

木の実降る音土くれに吸ひ込まれみゆき

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