「燕」
「夏潮」の稽古会を知多半島の師崎で行ったことがありました。海上タクシーで毎日違う島へ繰り出したり、いつになく賑やかな行程でした。漁港に翻っていた燕たちも印象に残っています。
「一刃の黒曜石の燕かな」という俳句になりました。
今回の選者
特選1
地下道をマッハで抜ける燕かな防子
選評
「マッハで」という俗語に、燕のスピード感がよく表れています。薄暗いところをくぐるとき、余計に速さが感じられたのかもしれません。
特選2
しばらくは帰れぬ町を燕飛ぶ沙那夏
選評
持ち家や実家のある町から、よその土地へ転勤になったとか、そういった事情を想像しました。
巣に戻ってくる燕と自分の境遇が重なって、感慨深く思われたのでしょう。
巣に戻ってくる燕と自分の境遇が重なって、感慨深く思われたのでしょう。
特選3
反り返へるラヂオ体操つばくらめ菫久
選評
ラジオ体操の反り返った姿勢と飛ぶ燕の描く弧とに響き合うものがあります。調べの勢いも気持ちよく思われました。
佳作
シャッターの上がる隙間を巣へ燕灰頭徨鴉
燕さへ戻らぬ生家取り壊す森 佳月
燕幼なじみのまなとまな法典
寺町は漁港の近く燕くる伊藤順女
肘つきて燕の低き眺めたりのりおう
燕来る母校のしづむみづうみに押見げばげば
喘息の和らげる朝初燕まこと
開通のテープカットや群燕砂楽梨
渇き田へ水もどかしく燕鳴く夕弥
燕飛ぶ伝へたきことあるごとく青野すすき
開店の花は賑やか初燕城内幸江
営巣の燕見守る五年生秋野しら露
字名の残るバス停つばくらめ立部笑子
翻す翼ぴかりと初燕堀 雅一
燕来る大観音の足元に勝本熊童子
燕さへ戻らぬ生家取り壊す森 佳月
燕幼なじみのまなとまな法典
寺町は漁港の近く燕くる伊藤順女
肘つきて燕の低き眺めたりのりおう
燕来る母校のしづむみづうみに押見げばげば
喘息の和らげる朝初燕まこと
開通のテープカットや群燕砂楽梨
渇き田へ水もどかしく燕鳴く夕弥
燕飛ぶ伝へたきことあるごとく青野すすき
開店の花は賑やか初燕城内幸江
営巣の燕見守る五年生秋野しら露
字名の残るバス停つばくらめ立部笑子
翻す翼ぴかりと初燕堀 雅一
燕来る大観音の足元に勝本熊童子
気になる句
また来たと燕はつんと澄ましたる
燕が澄ましているというのは、大きな発見です。
「また来たと」という様子に見えたのだと思いますが、それを言ってしまわない方が詩になると思いました。
「また来たと」という様子に見えたのだと思いますが、それを言ってしまわない方が詩になると思いました。
選者吟
つばくらめ忍びの者の里となむ前北かおる
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