2月の投句箱

ワカメ

「若布」

浜松に住んでいた頃、三河湾に浮かぶ日間賀島に足を伸ばして海の幸を堪能したことがありました。
民宿で出された朝食が衝撃的で、思わず「どんぶりに盛られし若布島の朝」と五七五にしてしまいました。
「惜春」誌上で高田風人子先生に褒められたのが意外で、記憶に残っています。

今回の選者

前北かおる(まえきた かおる)
選者:前北かおる
日本伝統俳句協会関東支部千葉部会長。
「夏潮」会員。句集『ラフマニノフ』、『虹の島』。

ブログ「俳諧師 前北かおる」 
YouTubeチャンネル「前北かおる」 

特選1

神棚に奉るべき若布かな落句言

選評

「和布刈神事」も季題になっていますが、これは漁師の家の神棚にお供えするものなのでしょう。「べき」という文語の助詞が格調高く響いて素敵です。

特選2

潮の香の洗濯ばさみ若布干す中島容子

選評

「洗濯ばさみ」という道具がリアルに見えてきて良いと思いました。
香りだけでなく、プラスチックが粉を吹いていそうな質感、感触も伝わってきます。

特選3

ひん曲がる白い長靴若布採り蛾触

選評

竿でねじ切って引き揚げるのだと思いますが、その時に足を踏ん張るせいで「ひん曲が」っているのでしょう。力感とともに若布の重さが伝わってきます。

佳作

若布採る島の嫗の銀の髪高木音弥
丘に旗揚がりて出づる和布刈舟桜鯛みわ
東京の坂の一つを若布売石塚彩楓
湯に振れば色鮮やかに生若布東の山
若布舟舳先大きく戻り来ぬますお
たくましき海女のかひなや若布刈工藤遊子
塩振つてしゃもじで混ぜる若布かな小沢こうじ
東京の海は窮屈若布浮くノセミコ
船盛の艫にあしらう若布かな浮雲
洗濯の肌着の隣若布干す闘魂
麺よりも長き若布を啜る音紅紫あやめ
若布干す浜でラジオを聞きながら木村隆夫
細々と独り浜唄若布干す百瀬はな
九十の朝を迎ふる若布かな熱田俊月
荒縄の撓む若布の天日干し創遊

気になる句

手土産の塩蔵若布涙味
「涙味」の物語性に惹かれました。
帰ることのできない故郷から、訪ねてきてくれた人があったとか、そういった事情でしょうか。
もう少し手がかりがあれば、より共感できると思いました。

選者吟

知盛のすだま若布を被きたる前北かおる

Web投句箱への投句はこちらから

今月のweb投句はこちらのページで募集しています。
ふるってご参加ください。