7月の投句箱

テントウムシ

「天道虫」
背中の水玉模様が愛らしい、色鮮やかな昆虫。
「お天道様に向かって飛んでゆく」というのが、その名の由来とか。

今回の選者

長谷川槙子(はせがわ まきこ)
鎌倉一条恵観山荘の庭園で見つけた「猪の目」(いのめ)。ハート形に見えます。
1962年生まれ
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。

特選1

天道虫ほしを落とさず羽ばたけり宇佐美好子

選評

天道虫が背中に星をのせているとは詠えても、星を落とさずに飛び立ったとは中々詠めない。小さきものへの慈しみの目差しが温かい。

特選2

天道虫飛んで白紙に戻りけり大月順子

選評

閉じた羽に星をのせていた天道虫が、何もなかったかのように発った。どこか別の世界に行ってしまった天道虫。取り残されたと感ずる作者の思いが印象的。

特選3

天道虫いちばん大きな雲へ飛ぶ八田昌代

選評

天道虫は、たくさん浮かぶ雲の中で一番大きな雲を目指して飛び立ったのだ。そう想える作者の詩心に羨望を覚えた。

佳作

葉の先の天道虫は思案中カミムラフサコ
草を這ふ天道虫のかろさかな工藤遊子
たたみきれぬ翅を震わすてんと虫沙那夏
大空へちよつとお遣ひ天道虫春よ来い
天道虫羽のきれいに割れにけり藤田康子
天道虫吾子もいつかは飛びいづる深町明
天道虫人間臭き掌を這へるすいか
中指の次はどこゆく天道虫飯田夷佐久
通園は短い旅やてんと虫立部笑子
薄羽を仕舞ひ忘れし天道虫dragon
天道虫が大仏殿の中へ入る茫々
空はいま天道虫を抱きけりみなと
天道虫七つの悲喜を背負ひけり佐々木宏
天道虫天動説を背負ひたる釜眞手打ち蕎麦
てんとう虫地球が丸く見ゆる丘葦たかし

気になる句

漱石の本をころころ天道虫
漱石の本の頁を、何も知らずに這う天道虫の動きが愛らしい。書名を具体的に詠み込むと面白いかも。

選者吟

天道虫飛んでゐるとき愛されず槙子

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