「春の風邪」
暖かくなって、うっかり引いてしまう風邪のこと。
冬に流行する感冒と比べ長閑な印象を受けるが、案外治りにくい。
今回の選者
長谷川槙子(はせがわ まきこ)
1962年生まれ
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。
都内女子校の国語科講師。鎌倉に住み、吟行をこよなく愛する。
卯浪俳句教室講師。
特選1
何も無き日々に俄に春の風邪えだまめ
選評
春の風邪を、平穏な日常を彩るもののように詠む作者の心持ちの明るさに惹かれた。「に」の繰り返しに、切迫感も少々。
特選2
立ち替はり猫の見に来る春の風邪久森ぎんう
選評
春の風邪を引いた作者が次々にやって来る猫を眺めている。猫との情の通い合いを想わせる詠み方ゆえの、仄々とした世界が魅力。
特選3
春の風邪本から落ちる正誤表たま走哉
選評
挟まれた正誤表がはらりと落ちる瞬間ほど鬱陶しいものは無い。安静にと始めた読書の時間に、少し邪魔の入った気分がよく伝わる。
佳作
天井の雨音寂し春の風邪みなと
野良猫の騒いでをりぬ春の風邪多々良海月
春の風邪電話で済みし用ばかり光楚
目覚めたる午後の窓辺や春の風邪風紋
ラジオから今日の運勢春の風邪葦たかし
エルメスのネクタイだらり春の風邪ダック
さつきから進まぬ時計春の風邪嘉門生造
また同じところ読みをる春の風邪根本葉音
湯気の立つ薬罐ずっしり春の風邪小沢コウジ
春の風邪小さきわがまま二つ三つ菫久
雲間より出づる飛行機春の風邪ゆりのゆき
春の風邪少し濃く引くアイラインすずしろゆき
春の風邪夫へうつして治りけりキートスばんじょうし
春の風邪教授の声にまどろめる夕空かのこ
憧れは憧れと知る春の風邪森無田
野良猫の騒いでをりぬ春の風邪多々良海月
春の風邪電話で済みし用ばかり光楚
目覚めたる午後の窓辺や春の風邪風紋
ラジオから今日の運勢春の風邪葦たかし
エルメスのネクタイだらり春の風邪ダック
さつきから進まぬ時計春の風邪嘉門生造
また同じところ読みをる春の風邪根本葉音
湯気の立つ薬罐ずっしり春の風邪小沢コウジ
春の風邪小さきわがまま二つ三つ菫久
雲間より出づる飛行機春の風邪ゆりのゆき
春の風邪少し濃く引くアイラインすずしろゆき
春の風邪夫へうつして治りけりキートスばんじょうし
春の風邪教授の声にまどろめる夕空かのこ
憧れは憧れと知る春の風邪森無田
気になる句
太歳の見つむる家路春の風邪
春の風邪と木星の取り合わせが新鮮。
中七を(太歳に)「見られてゐたる」または「見つめられたる」等として、「家路」を省略できると尚佳いかも。
中七を(太歳に)「見られてゐたる」または「見つめられたる」等として、「家路」を省略できると尚佳いかも。
選者吟
鳥籠に声かけてゐる春の風邪槙子
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