12月の投句箱

鴨

「鴨」

河川だろうが池だろうが普通に見ることができる鴨。種類もいろいろ。

今回の選者

山本素竹(やまもと そちく)
山本素竹のアイコン
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など

特選1

鴨群れて無用の池のある理由林山千港

選評

鴨の来るまで、作者の目には何の動きもなかった池なのだ。
鴨のいることの華やぎ、喜びが語られている。

特選2

湖に漆黒の闇鴨の声近江菫花

選評

漆黒の闇が広がるばかりの湖から鴨の声。生き物の声にどれだけ人は心動かされるだろうか。
省略の効いた句。

特選3

鴨鳴くや水に降りれば空を見ず呉帆

選評

そう言われてみると、水にいて空を仰ぐ鴨を見たことはない。空を見ない……その一点の発見で一句となった。

佳作

いつせいに鴨飛び去りて水たひら一日一笑
そろそろか羽根ばたつかせ鴨の陣茶々
羽撃ける鴨や水浴び光浴び香舟
羽ばたきて水面に鴨の立ちにけり大谷如水
結界のあるかに鴨の引き返す久森ぎんう
飛ぶ自由飛ばざる自由池の鴨太平楽太郎
二羽の鴨水尾を一つに行きにけり青蛙
映る鴨鴨と一つとなりにけり菫久
初鴨に湖広々とありにけり青花
小さき水尾鴨の嘴にもありにけり青蛙
鴨眠るおのが背中を枕とし森 佳月
鴨の羽水面の静寂裂くがごと潮風の台所
鴨の浮く喫水線の光りをり隠岐灌木
ジッパーのごと川を行く鴨の列八田昌代
煌めきて鴨の嘴より雫かな蒼鳩 薫

気になる句

水の紋重なり合うて鴨の群
水の紋と水輪とどう違うのだろうかと思った。私どもは普通「水輪」を使う。
作者はどのような水の模様を言っているのだろうとしばらく考えたが結論は出ない。
水輪だったらもちろん入選。

選者吟

公園の鴨の餌なきとき静か素竹

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