10月の投句箱

虫

「虫」

密閉度の高い家屋 音に包まれた暮し いよいよ遠くなる虫の声

今回の選者

山本素竹(やまもと そちく)
山本素竹のアイコン
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など

特選1

虫の音の夜空より降りしきりけり飯田夷佐久

選評

アオマツムシの声でなく、古くからいる虫の声もまるで空の闇から降ってくると感じられることに同感。虫時雨の中見上げる夜空。

特選2

虫鳴くや生家の跡にパーキングたろりずむ

選評

虫が鳴いているのだから、構造物を撤去した後の更地のパーキングなのだろう。慣れ親しんだ家が今はなく……。季題がうまく使われている。

特選3

街灯の途絶えて高き虫の声大谷如水

選評

街灯がなくなれば闇も深くなる。同時に耳は冴えてきて虫の音は高くなるのだ。視覚と聴覚の捉え方が面白い。

佳作

仕舞湯の窓ふるはせて虫時雨まこと
夫寝付き虫聞く耳となりにけり香舟
部屋の灯を消してしばらく虫の声愛燦燦
文具屋に売らるる虫の鳴いてをり葦たかし
こんなにも歩きて同じ虫の声光疏
法事終へ一夜の宿や虫の声みづ杞
歩まねば溺れてしまふ虫時雨珈琲斎
家の灯の少しずつ消え虫の闇dragon
虫の声聞きつつ夜をまたぎけり令和の子
原つぱへ弁当広げ昼の虫杉森大介
虫の声碁石打つ度止まりけり清瀬ハイジ
ペン擱いて暫し聞き入る虫の声近江菫花
ぷつつりと虫の音止みて猫通る柚木みゆき
虫時雨とぎれて夜のおそろしき中島容子
二本目はぬる燗にする虫の秋清瀬朱磨

気になる句

虫時雨とぎれて夜のおそろしき
夜道を歩いているのだろうが作者がどこにいるのか、何が見えているのか。
それがよくわからないのが残念。特選にしない理由となった。

選者吟

虫の音の百を一つに聞いてをり素竹

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