9月の投句箱

バッタ

「ばつた」

飛ぶのは不器用 着地も転んだりして 嫌われてはいないようです

今回の選者

山本素竹(やまもと そちく)
山本素竹のアイコン
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など

特選1

緑より緑へばつたとびにけり加良太知

選評

客観的な描写。しかも多くのものを内蔵している句。素晴らしい。

特選2

国を断つ鉄条網やばつた跳ぶdragon

選評

隣国との争いの象徴鉄条網。不条理に対する飛蝗の自由を描いた。

特選3

ばつた飛ぶ生真面目にまたでたらめに柚木みゆき

選評

表現が面白い。実際にばったの飛ぶ様子はまさにこの通りと思う。

佳作

ばった追ふ孫追ふ妻も聲弾み南麓
雑草を取る手にひょいと乗るばったもふ美
ばつたの眼空の青色借りておりさとし
拍動すやわきばつたの腹抓む茉莉花
ナナハンのような殿様ばったかな中島容子
腰下ろしばつた飛び出す土手の草北青山二号
何事もなく片脚のばつた跳ぶ長谷機械児
飛ぶ音のしてきちきちに気付きけり多々良海月
年取とつて何故かばつたに触られず珍酒
目が合えばバッタかがんで飛ぶ姿勢梅里
行先を先へ先へとばつた行く八田昌代
捕えても放す他なく青ばつた矢想
ばつた跳ぶ波紋の響きあふやうに久森ぎんう
草になり静かにゆれるバッタかなぶえもん
草むらにバッタと目の合う静寂藤井眞魚

気になる句

紫蘇の葉におんぶ飛蝗のいるはいるは
まず「いるはいるは」は歴史的仮名遣いですと「ゐるはゐるは」です。
加えて紫蘇も季題ですから一句の中に二つの季題。採りにくいですね。

選者吟

川に出てしまひ戻つてくる飛蝗素竹

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