7月の投句箱

汗

「汗」

汗はあまりかかない方だが
汗まみれになってみたいとは思う

今回の選者

山本素竹(やまもと そちく)
山本素竹のアイコン
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など

特選1

盤上の動かぬ駒や汗にぎるしんい

選評

私も昔将棋をやったことがある。藤井二冠を応援している。勝敗を左右する長考の場面だろう。観戦者のにぎる汗が面白い。

特選2

掃除機のゆく先々に垂れる汗キートスばんじょうし

選評

暑い中の、汗を垂らしながらの掃除となってしまった。大変だったろうが一句は授かった。汗の光る床が見えるようだ。

特選3

汗避けて出来ぬ仕事の残りけり今井 苳子

選評

汗を掻くのは誰しも嫌だ。できれば汗を掻くことのない仕事が優先となる。残念ながら残った仕事は汗をかかねばならないのだ。汗が描けている。

佳作

乳と汗混じりて匂う赤ん坊酔猿
ゆつくりとするほど汗のスクワット三崎扁舟
グラウンドに汗と汗とがぶつかりぬ英世
汗の身となりて見つけし風の道今井 苳子
汗ばみし身体を風に委ねたりえだまめ
行列の先はまだまだ玉の汗中島容子
幼子の汗も泪も美しき青野すすき
児の頭走るバリカンたぎる汗さかぐちくみこ
汗かかぬ人に気後れしてをりぬ町須
汗ふいて一から髪を直しけり呉帆
汗冷やすエアコンの風今は好きえみい
自転車を降りればぶうっと汗が噴き東の山
みどりごのからだは汗でできてゐる酒梨
雑草に汗だくだくと一時間桔梗
まづ汗を拭いて始まる朝稽古たろりずむ

気になる句

みどりごのからだは汗でできてゐる
その誇張が許容できるかどうかで評価は分かれるのだろう。私は気に入った。その驚きがよく伝わってくる。

選者吟

自粛解け汗の運動ひさしぶり素竹

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