「寒釣」
釣りを離れて思い出すのは寒かったこと
釣れないとなおさら
今回の選者
山本素竹(やまもと そちく)
1951年生まれ
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など
書と篆刻の個展を続ける
朝日俳壇賞、日本伝統俳句協会賞など
特選1
寒釣のバケツに掬ふ暗き水風信
選評
夜の釣りの経験があるに違いない一句。その暗い水の色は経験者ならではの視点。寒さの中ではなおさらの暗さを持つであろう水。客観写生の力を感じます。
特選2
寒釣や去年の釣果を信じをり薩摩っぽ
選評
ということはまだ釣れていないらしい。もともと寒釣りはさほどの釣果は望めない。
よく釣れた記憶にすがり、いつもそうでありたいと思う釣り好きの気持ちはよく分かる。
よく釣れた記憶にすがり、いつもそうでありたいと思う釣り好きの気持ちはよく分かる。
特選3
寒釣や早やいくつかのシルエット釜眞手打ち蕎麦
選評
薄暗い朝の光景。釣り場にうごめく人の姿を見、もう来ているのかと驚く作者。寒さなど何するものぞ……と、目的があればかなりな能力を発揮する人間たち。
佳作
寒釣の風除けの崖背に負ひて松子
声かけて来る人も無し寒の釣りよしこ
寒釣に見物人もなかりけり大津英世
寒釣へ戦支度の夫ひとり珈琲斎
寒釣の釣果を問わぬ妻がゐて茉莉花
寒釣や餌のふすまの温さうな多々良海月
寒釣や等間隔に凝る背愛燦燦
寒釣やそろそろ欲しき人のこゑ砂山恵子
寒釣りに釣果競へる人のなく高木音弥
寒釣の頭上を始発列車かな渡邉竹庵
朝日さす寒釣の糸ひかりをりききょう
寒釣の珈琲冷める速さかな嘉門生造
寒釣の乗合船の無口かな田んぼ
寒釣やひと日無言でありにけり蒼鳩 薫
寒釣の血のわく中り一度のみカミムラフサコ
声かけて来る人も無し寒の釣りよしこ
寒釣に見物人もなかりけり大津英世
寒釣へ戦支度の夫ひとり珈琲斎
寒釣の釣果を問わぬ妻がゐて茉莉花
寒釣や餌のふすまの温さうな多々良海月
寒釣や等間隔に凝る背愛燦燦
寒釣やそろそろ欲しき人のこゑ砂山恵子
寒釣りに釣果競へる人のなく高木音弥
寒釣の頭上を始発列車かな渡邉竹庵
朝日さす寒釣の糸ひかりをりききょう
寒釣の珈琲冷める速さかな嘉門生造
寒釣の乗合船の無口かな田んぼ
寒釣やひと日無言でありにけり蒼鳩 薫
寒釣の血のわく中り一度のみカミムラフサコ
気になる句
木の芯か釣り師齧りつ寒凌ぎ(回文俳句)
回文を作る上で大変なご苦労をされていることはよくわかりますが、では俳句としてどう評価するかといえば、残念ながらその労力を加味することはできません。残念ながら……。
選者吟
寒釣りや鈴を聞く窓少し開け素竹
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