10月の投句箱

新米

「新米」

その年に収穫した米。今年米。

今回の選者

今井肖子(いまい しょうこ)
今井肖子のアイコン
2000年より母千鶴子の手ほどきで作句を始める
2004年日本伝統俳句協会賞受賞
句集『花もまた』
卯浪俳句教室講師、ホトトギス同人
好きなもの:スウォッチ、数学、日本酒

特選1

下宿生集め新米祭りかなまつぼっくり

選評

大家さんがいる賄い付きの下宿など、今ではほとんどないでしょう。でもこの「新米祭り」から見えてくる幸せな光景は、こんな時代だからこそ貴重なものに感じられます。仕立て方も上手い。

特選2

釜の蓋開ける緊張今年米松井くろ

選評

食べ物の句は美味しそうに作れと言われますから、今回美味しそうな句がたくさん並びました。その中で、釜の蓋を開ける一瞬を切り取って、緊張、とはなるほど、と納得。

特選3

新米やひらがな多き母の文百合乃

選評

田舎から新米が送られてきた句、新米を遠くに住む家族へ送る句、も多くあり、それぞれ心情が感じられましたが、中七下五の具体的な叙し方に個性が感じられます。

佳作

炊く人を選ばぬ味よ今年米杉尾芭蕉
新米に一汁一菜よき日かなまこと
隣家にも立つ新米の夕煙堀雅一
新米を軽めに盛つて飯茶碗
夕富士や新米の炊きあがりし香光子
今年米だんだん軽くなる余生正男
新米と金のシールの貼られをり玉井令子
今年米着きて米櫃洗ひけり心一
新米を握る父の手ほの赤し和歩
新米の茶碗小さく見えにけり照波
新米の貼り紙に沸く社食かなキートスばんじょうし
ヒマラヤの塩を二つぶ今年米柿の実
新米や今年の日記読み返す嘉門生造
一振りの塩すら要らぬ今年米珈琲斎
新米の香る六畳一間かな城内幸江

気になる句

空蒼く新米炊き出す湯気五本
新米を炊いている湯気が青空に向かって五本、おもしろい句です。
中七の「炊き出す」は動詞なので「炊き始める」という意味になり、すっきり中七でおさめて「新米を炊く」で十分分かるのではと思いますがいかがでしょう。

選者吟

新米のすこし冷めたる塩むすび肖子

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