5月の投句箱

薄暑

「薄暑」

うっすら汗ばむほどの初夏の暑さ。

今回の選者

今井肖子(いまい しょうこ)
今井肖子のアイコン
2000年より母千鶴子の手ほどきで作句を始める
2004年日本伝統俳句協会賞受賞
句集『花もまた』
卯浪俳句教室講師、ホトトギス同人
好きなもの:スウォッチ、数学、日本酒

特選1

看板の錆びた蕎麦屋を過ぎ薄暑

選評

少し汗ばんでいる感じが無理なく伝わって来ます。
過ぎ、が良い。これを「看板の錆びをる蕎麦屋街薄暑」などとすると錆びた看板の小道具感が暑苦しいだけになってしまいます。

特選2

街薄暑乾物屋にて鰹節彩楓(さいふう)

選評

仄暗く独特の香りに満ちた乾物屋で作者は鰹節を買ったのでしょうか。
動詞が無く漢字八割という仕立て方も個性的で、薄暑らしさが醸し出されています。

特選3

ほろ酔ひの母と娘の薄暑かなまつだまゆ

選評

ちょっと一杯やって肩を並べて帰るほろ酔いの母娘、いいですね。昨今はなかなかむつかしい状況ですが……。
母と娘、二人の薄暑という表現もおもしろいです。

佳作

テーブルのグラスの丸き染み薄暑一太郎ラン坊
読み解けぬ翁の句碑や辻薄暑風来子
予後の身の庭へ踏み出す薄暑かなはぐれ雲
夕薄暑すでに金星現るる谷本義明
作業着は油の匂ひ夕薄暑城内幸江
ゆっくりとホームベースを踏む薄暑たろりずむ
夕薄暑緋色の空に塔の影熊蔵
缶コーラ開け炭酸の鳴る薄暑包丁
街薄暑ヘリコプターの飛ぶ不穏たいぞう
舞妓らの白きうなじや夕薄暑大谷如水
休校のポニーテールや夕薄暑高津喜久子
石積みの水縄たるむ薄暑かな秋山白兎
薄暑かな秘密の道は風通る昌代
ワンピースにアイロンかける午後薄暑伊藤順女
朝の窓烏かすめて薄暑かなますみ

気になる1句

夕べはや赤き月出る薄暑かな
夏の赤みがかった夕月と薄暑、良いと思うのですが「はや」と「出る」がちょっと説明っぽくて惜しいなあと思いました。
例えばですが「夕空に赤き月ある薄暑かな」などとされると少し説明臭は消えるかなと。

選者吟

貼紙の増ゆる商店街薄暑肖子

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