虚子の声・夏の句


 
 

高濱虚子

朗読: 高濱虚子
音楽: 池内友次郎
昭和22年6月16日
キングレコードスタジオにて録音


 
牡丹散る盃を銜みて悼まばや

梅雨晴の波こまやかに門司ケ関

夕闇の迷ひ来にけり釣葱

山川にひとり髪洗ふ神ぞ知る

箱庭の反り身の漁翁君に如かず

向日葵が好きで狂ひて死にし画家

何事も人に従ひ老涼し

家二三ある山蔭に滝ありと

滝の威に恐れて永くとどまらず

昨日今日客あり今日は牡丹剪る

何某の院のあととや花菖蒲

時過ぎて尚梅落とす音すなり

四五歩して夏山の景変りけり

夏草に延びてからまる牛の舌

蝙蝠にかなしき母の子守歌