虚子の声・冬の句


 
 

高浜虚子

朗読: 高濱虚子
音楽: 池内友次郎
昭和22年6月16日
キングレコードスタジオにて録音


 

噂過ぐ時雨のすぐる如くにも

大根を水くしやくしやにして洗ふ

心ひまあれば柊花こぼす

一切の行蔵寒にある思ひ

湖の寒さを知りぬ翁の忌

冬空を見ず衆生を見大仏

落葉吹く風に箒をとゞめみる

干笊の動いてゐるは三十三才

初時雨しかと心にとめにけり

彼の道に黒きは雪の友ならん

山道に雪かゝれある小家かな

大根を鷲づかみにし五六本

舟人は時雨見上げてやり過し

炬燵出ずもてなす心ありながら

冬籠心を籠めて手紙書く