10月の投句箱

夜寒

「夜寒」

晩秋感じる夜分の寒さ。

今回の選者

小川龍雄(おがわ たつお)
小川龍雄のアイコン
1952年生まれ
1978年から句作
日本伝統俳句協会理事

特選1

もの言はぬ母の手握る夜寒かな風来子

選評

病床か或いは亡くなられたか、冷たい空気感。

特選2

家修理順番待ちの夜寒哉綉綉

選評

台風の後の豪雨で日本列島は大変なことになった。臨場感があり、季題が活きている。

特選3

故郷の母に文書く夜寒かな伊予尚女

選評

何となく人恋しくなる頃。

佳作

煙草切れ自転車漕ぐや夜寒道英ちゃん
写経する筆をふと置く夜寒かな立野音思
夜寒なり六甲の嶺深々と神戸のプランクトン
二次会の別れて醒めて夜寒なるたんくろう
夫婦げんか ひとり夜寒の 缶コーヒーまこ
老犬のわれを迎ふる夜寒かなたいぞう
夜勤終え夜寒の街にバスを待つ八十二
孤独なる客よ夜寒の終電車dragon
知らぬ間に猫背となりし夜寒かな英世
隣村の太鼓聞こゆる夜寒かな寺津豪佐
断捨離の決意薄れる夜寒かな照波
機音の止みたる路地の夜寒かなぶえもん
雨傘を振つて夜寒の戸を開けるわらび一斗
終電を待つや夜寒の二番線彩楓(さいふう)
待つ灯り一つ残して夜寒かな月の桂

気になる1句

猫の子の鳴きし彼方も夜寒かな
遠くの方から聞こえる猫の声に思いを馳せる。作者は見知らぬ野良猫にまで愛情を感じている。しかしこの句、猫の子がいけない。子猫、親猫、孕猫などは春の季題。 この句の場合、猫の子ではなく猫として推敲されればよい句になる。

選者吟

風音のありて夜寒の厨かな龍雄

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