5月の投句箱

新緑

「新緑」

初夏の木々の緑。
古木新木問わず艶やかな緑。

今回の選者

小川龍雄(おがわ たつお)
小川龍雄のアイコン
1952年生まれ
1978年から句作
日本伝統俳句協会理事

特選1

図書館車新緑の中やって来るまっちゃん

選評

図書館の設置が難しいような過疎地にやって来るのが移動図書館。
辺鄙な場所と一言で片づけるのではなく、自然豊かな人間らしい生活ができる場所と考えたい。

特選2

新緑の映えてガラスの丸の内蕨一斗

選評

発展著しい丸の内には立派な街路樹が植えられ、よく手入れされている。
総ガラス張りのような高層ビルの窓には新緑が良く映える。

特選3

江ノ電や新緑の庭掠め去る東西 南北

選評

鎌倉駅を出てすぐの江ノ電は、まるで市街電車の様に家々を掠めて進む。
庭の新緑が勢い良く伸びてくると葉先は電車に触れんばかりになる。
この句はその庭から江ノ電を眺めた句。

佳作

新緑を重ねて奥に青不動GONZA
新緑の風に赤子のすやすやとのりこ
新緑にそよぐ静けさありにけり硝子
新緑や雨後の砂利踏み記帳へと京おんな
新緑やスカイブルーの木のベンチみなと
新緑や湖に一筋海賊船拓路
新緑や鳥啼くやうに子らの声たんくろう
飛鳥路や新緑濡るる石の道古都ぎんう
新緑の岬一つを飲み込めり英世
新緑や風そろへたり乱したり尼坊
新緑の風を孕みて閑かなるあまめ
新緑や牛百頭の咀嚼音モペット
図書館は新緑の中徒歩で行くますみ
新緑のまるごと安土城址かな青花
新緑に曲がりし背中を伸ばしけりぐずみ

気になる1句

風光るそよぐ若葉の香りかな
「風光る」と「若葉」が季題で、この句は季重なり。
季重なりが絶対いけない訳ではないが、この句は二つの季題がそれぞれに主張し合い、相殺してしまっている。
「そよぐ」で風は分かるのだから、「風光る」は無くてもいいのではないか。

選者吟

新緑の中へと猫の消えてゆく龍雄

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