4月の投句箱

春愁

「春愁」

春の愁い。
華やぎの気持ちの中の何となく物憂い感じ。

今回の選者

小川龍雄(おがわ たつお)
小川龍雄のアイコン
1952年生まれ
1978年から句作
日本伝統俳句協会理事

特選1

春愁や八十路の老爺恋炎雲母

選評

気を塞ぐ必要などない。人生百年時代、何歳であろうが精神が若ければ青春なのだ。心の青春を大いに謳歌して貰いたい。
恋炎は恋の炎を縮めたのだろうが、少し苦しい。しかしその苦しさを吹き飛ばすくらい句に勢いがある。

特選2

春愁やAIに聞く鳥の声よしこ

選評

人の声も動物や鳥の声も最近はAIで合成できる。無機質な合成音はどことなく空しい。

特選3

春愁やノンフィクションの本を閉じ瑞月

選評

本の内容に衝撃を受けたのだろうか。内容がそのまま本人の心にまで突き刺さってきているようだ。
本を閉じ、目を瞑って反芻している作者が目に浮かぶようだ。

佳作

春愁や猫三匹と四畳半孝雄
春愁やたゆたふ舟に大の字に薩摩っぽ
春愁や浅き眠りの夜明けたり遊子
おはようのひと声に解く春愁山畑 洋二
春愁やベルトの穴が足りないの相沢はつみ
春愁や 子の返信は 二文字なりびーぐる
春愁や間遠に聞ゆ鐘の音
春愁や猫を相手に語りをり三吉
春愁やマーカー引きし参考書dragon
話す当て無き春愁に巣喰はるるスナフキン
春愁や通り過ぎたる上野駅有瀬こうこ
春愁や服と気候のミスマッチさむまうす
旅疲れ春愁となり長引きぬ飛鳥
春愁や再就職へ波高しまつぼっくり
春愁やピアノの蓋の薄埃彩楓(さいふう)

気になる1句

そよぐ風いにしえの日のとおり道
残念ながら無季になってしまった。「そよぐ風」が「春愁や」なら完璧。

選者吟

春愁の扉入口ばかりなる龍雄

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